2023年3月7日~8日、SIP-adusの第2期成果報告会が開催されました。
SIP-adusというのは、「トヨタの新社長と特許」で少し触れましたが、自動運転の開発を国家をあげてやろう、という大プロジェクトです。
実はこのプロジェクト、第1期・第2期と計9年もやっており、第2期の終了ということでこのタイミングで成果報告会となったわけです。
明日にもGoogleやAppleが自動運転のクルマを売り出すんじゃないか、という勢いで自動運転がブームになってからもう10年経っているのですね。
秋葉原で開催されたこの報告会では、様々な大変興味深い内容がありました。おそらく今後メディアでも取り上げられるでしょうし、ここでは、まず、SIP-adusそのものについて見てみましょう。
SIPというのは戦略的イノベーション創造プログラムのことです。SIPとして取り組まれているテーマは、自動運転だけではありません。バイオ、防災・減災、物流、深海資源など、多岐にわたっています。
そうしたテーマに対して、府省連携・産官学連携で推進するのが、SIPの特徴とされています。
もちろん、予算もしっかり準備されていますが、ITSの業界で特に期待されたのは府省連携、というところです。
自動運転の世界では、関係省庁がたくさんありますが、法令やインフラ整備など、”官”との連携が必須です。しかし、様々な省庁がバラバラに動いていては、その実現には大変な困難が予想されました。
そんななか、adusすなわち、Automated Driving for Universal Servicesというとらえ方で、広く社会に実装出来る自動運転の技術開発や環境整備などを進めてきたのがSIP-adusという訳です。
SIP自身は内閣府が管轄しています。
SIP-adus第2期(2028-2022年)の成果報告書を見れば、内閣府だけでなく、まさに様々な省庁が関係していることがわかります。
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構・・・経済産業省と関係が深い)、警察庁、国交省、経済産業省、総務省などの名前を見ることが出来ます。
自動運転は一つの例でしかありません。ITSというものは、官との関係が極めて大事なのです。
「豊田章一郎氏とITS Japan」で少し触れたITS Japanでも関係官庁として、内閣府、デジタル庁、総務省、経済産業省、警察庁、国土交通省が挙げられています。
実に多くの省庁が関係しているわけです。
よく、日本では、縦割り行政などと悪口言われますが、国土交通省のところにわざわざ括弧書きで、”(自動車局)”、”(道路局)”と書かれているあたり、何かを暗示しているようにも感じます。
ただ、交通社会という観点でいえば、道路局が道路に関して管轄し、自動車局が自動車の型式認証などを取り扱っているのですから、別々の役割を持っているので、別々に扱うということなのでしょう。
SIP-adusの第2期最終報告書をみると、自動運転の実現に向けて道路局は合流支援や先読み情報提供についての取り組みをした、とあります。一方の自動車局は自動運転車の安全技術ガイドラインの策定や道路運送車両法の改正を行った、とあります。
このように、各省庁はそれぞれの役割を持っており、経産省などほかの省庁も含めて、SIP-adusの第1期(2014-2018年)から内閣府がとりまとめ省庁連携をすすめてきたようです。ただ、この1期のころは、こうした取り組みも初めてのことで、各省庁が”疑心暗鬼”に近かった、と素直に書かれています。
予算についても、内閣府が各省庁に分配する形で、最初のころは、名ばかりの省庁連携だったのかもしれません。それが、NEDOが管理法人になることで、フレキシブルな予算執行が出来るようになった、とのことです。
SIP-adusは、自動運転の開発・実用化という面にとどまらず、ITS関連省庁の連携という側面でも大きな実績を残したと言えるでしょう。
こうした連携体制が、SIP-adus以外の場でも発揮されるのか、ぜひ議員さんには注視してもらいたいものです。