SIP-adusの話題を少し書きましたが、いよいよ自動運転に関する法整備が日本でも出来て、実用化へ向けた動きが促進されそうです。
自動運転に関しては、これまでも様々な形で、実証試験などが行われてきました。いろいろな形でマスコミなどでも紹介されていますが、その成熟度合いはかなり違っているように見えます。どう違うのか、熟れ具合の見分け方を紹介しましょう。
現在、実用化とか実用化間近とか言われているのは、Lv3とかLv4とかの限定条件下での自動運転をするものです。このレベル3とか4とかの区別はあちこちに出てきますので、ここでは詳解しませんが、実際にはレベル3や4と言っても色々あるのです。
見分け方の第1のポイントは、制限速度です。
先日レベル4初の正式認可された福井県永平寺の自動運転車は最高速度12km/hです。よく老人が乗っているセニアカーの1.5倍。何かあっても大事故にはなりにくい、ということで、比較的市場に出しやすい形です。
また、世界初のレベル3市販車であるホンダのレジェンドは高速道路で渋滞時のみ動作する制限になっています。あくまで渋滞時などの運転肩代わりを想定しているのです。
渋滞時であれば、周囲のクルマの動きも予測しやすく、コンピュータでの演算処理やハンドル・アクセル・ブレーキといった車両制御(アクチエーション)も余裕が確保できます。
次のポイントは、センシング手段です。
よくあるのは、LIDARですね。自動運転車の試験車などをみると、クルマの屋根の上などに円筒状の装置が載せてあります。あれがLIDARで、レーザー光を発しながら、その反射により、周囲の状況をかなりの分解能で検知することが出来るのです。
船や空港の管制塔などにレーダーがクルクルと回っているのをご覧になったことがあると思いますが、LIDARも同様にあの円筒形の中で、レーザー光の送受信部がクルクルと回っています。
実はこのLIDARの進歩こそが初期の自動運転を支えていたといっても過言ではありません。
初期の自動運転車から、現在に至るまで、ほとんどの自動運転車に、このLIDARが搭載されているのを見ることが出来ます。
ただし、この装置はかなり高価です。自動運転開発の初期には、数百万円もするものでした。
今は生産台数も増えてかなり値段は下がりましたが、それでも実用という面ではかなりの障害です。どんなLIDARをどうやってクルマに搭載しているか、は自動運転車の成熟度合いを簡単に見分けられるポイントです。
大学の研究室なんかは市販のLIDARを屋根にポンと載せて「自動運転車」を作って走らせていますが、それは市販ありものを使ったあくまで、実験のためのもの、と判断できるわけです。
また、LIDARに限らず、ほかのセンサをどれだけ搭載しているか、もチェックポイントになります。
カメラやレーダーなど自動運転で使われるセンサは多岐にわたります。
それらが、何台どこにどうやって搭載されているのか、がよいチェックポイントになるわけです。ただし、センサの数に関しては、多ければいいのか、少なければいいのか、は一概に言えません。
最後のポイントは普通の人には見えませんし、往々にしてメーカ側も見せてくれませんが、どう品質保証されているか、です。
極端な例で言うと、自動運転の制御にAIを活用している場合、そのAIの動作がいつも正しいのか、どう保証しているか?という点です。
これはAIを使うときにいつも付きまとう難題です。なにせ、人間の脳が正しい判断動作をしているか、外からはすぐにわからないのと同様で、AIが正しく動いているか、いつも正しく働くのか、を判断するのは大変難しいのです。ISOなどではこの難題に挑戦し、きちんとした品質保証方法を確立しようとしています。
テレビのカメラの前で自動運転車がちょこっと走るのは、今や何の驚きでもありません。
どんなセンサをどう搭載し、ちゃんと品質保証されたプログラム(AI含む)が出来ているのか、よく見て、商品化へ向けた完成度を見分けましょう。