ETCと言えば、もう一つ気になるのはETCカードの存在です。
このカードは誰に課金すればいいのか、という情報をETCシステムに教えるためにあります。
車両に関する情報はセットアップ時に登録し、通行料の請求先の情報は、ETCカードから読みだされて送信されます。それによりシステムとしては、誰にいくら課金するのかがわかる仕組みなのです。
ですから、他人のクルマやレンタカーを借りた場合でも、車載器にETCカードを挿入して使うだけで、なんの手続きもなく自分のクレジットカード口座から通行料金が引き落とされるのです。便利ですね。
便利なのですが、実際のところ、レンタカーを借りたり、他人のクルマを使ったりして、有料道路を使う頻度ってそれほどあるのでしょうか。
このETCカード方式を採用することによって、ETC車載器ではカードを確実に挿入し読み取りのためのメカが必要になっています。料金所の手前には、カード挿入忘れを知らせるための特別な路側機が設置されていたりします。更には、ETCカードを入手し管理する手間も必要です。
全体でみると、かなりの有形無形のコストがかかっているわけです。
ちなみに、このETCカードですが、通信のセキュリティ確保のための情報(鍵情報)が書き込まれている必要があります。これもカード会社はITSサービス高度化機構(ITS-TEA)に金を払って入手しているのです。お値段は、本当は1件100円のところ、割引(還元)があり、70円です。
令和4年度事業計画によりますと、令和3年度で約1600万件のETCカード用鍵情報が発行されたことになっています。1年間でざっと11億円です。
日本では当たり前のETCカードですが、海外のETCではどうなのでしょう?
またもITS-TEA発行のITS便覧ですが、その中にご丁寧に世界各地のETCについて調査した結果が載っています。それによると、実は世界の大勢はだいぶ違っていることがわかります。
日本ではETC車載器というのがって、ETCカードを挿してその情報を読み取って路側機へ送るわけですが、海外では、例えばRFID方式という、かなり簡易なやり方が増えているようです。
このRFIDというのは、超ザックリ言ってしまうと、SUICAやEdyに近いもので、形としてはほとんどステッカーやカードぐらいのものです。それをクルマのフロントウインドウに貼っておくと、路側機からの読み取り電波に反応して、書き込まれた情報を送信します。
SUICAやEdyなら、読み取り機とほぼ接触するぐらいの距離なので、読み取りエラーは起きませんが、クルマと路側機では距離があり、それなりにエラーが発生するはずです。そこで、こうしたシステムでは、クルマのナンバープレート読み取り装置を組み合わせて使用しているようです。
システムへのクルマとナンバープレートそしてその持ち主の情報を登録することで、持ち主に自動的課金されるわけです。
となると、レンタカーを使った場合は少々やっかいなことになりそうです。実際に米国のNationalという大手レンタカー会社のHPには、”Can I take toll roads in a rental car?”なんてFAQが載っています。どうやら、借主に課金する仕組みが別途あるようですが。
日本のETCによく似ているのは中国で、ETCカードも用いられています。
他にも様々な方式があり、国による考え方の違いが表れているようです。面白いですね。
なお、ETCのいわば発展形として、道路課金という考え方が出てきています。これはこれで、ETCとは違った仕掛けが必要になります。いずれお話しすることにします。