最近のクルマ業界のホットな話題は、トヨタ自動車の社長交代でしょう。
2023/1/26、豊田章男社長から佐藤恒治執行役員への社長交代が発表されたときには、まさに突然のことで、驚きでした。
なにしろ、豊田章男氏はすでに10年以上社長を務めているとはいえ、まだ60代なかば。創業家出身ということもあり、当分交代は無いだろうと思うどころか、交代なんてことを考えてもみなかった方が多かったのではないでしょうか。
豊田章男氏は、G-BOOKというテレマティクスサービス(ざっくり言えば、クルマと通信することで出来る様々なサービスの総称)を立ち上げた人とされており、ITSには造詣が深いと思われますが、新社長の佐藤恒治氏はどうなのでしょう?
現社長と違い、技術畑バリバリの方のようですので、試しにどんな特許を出しているか、調べてみました。
日本の特許のデータベースである特許情報プラットフォームで検索したところ、”佐藤恒治”にヒットしたのは1件だけでした。
公開番号が特開2003-122801というその特許は、2001年の10月に出願されています。佐藤氏32歳頃のものですね。
中身は、CAD(コンピュータを使って設計をする方式。今では当たり前)による設計の際のデータの持ち方に関するもののようです。
総勢12名の共同発明者の一人として登録されています。
ちなみに、特許出願が1件だけ、と書きましたが、特許の数は技術者としての優劣を単純に表すものではありません。技術者の仕事にも様々な種類があり、それによって、特許を出す機会に大きな差が出ます。
たとえば、生産技術の技術者が、何かの製造方法について発明をして特許を出しても、それが侵害されているかどうか調査するのは困難です。製造方法ということは、工場の中を見ない限りわからないことが多いのですが、「工場の中は社外秘です」と言われればそれまでです。なので、生産技術関係で特許を出すことはあまりありません。侵害されていることがわからなければ、特許で発明を保護する意義もあまりありませんから。
(出来上がった製品を見れば、侵害がわかるような場合は別)
ところで、この佐藤氏の特許ですが、なにより興味深いのは、筆頭発明者が葛巻清吾氏になっていることです。
葛巻氏は、現在、SIP-adusのプログラムディレクターをされている方です。
SIPとは、戦略的イノベーション創造プログラムという、府省庁の枠を超え産官学連携で研究開発を進めるという、一大国家プロジェクトです。
adusというのは、Automated Driving for Universal Services のことです。
つまり、SIP-adusというのは、自動運転を開発する国家プロジェクトであり、そのかじ取りをしているのが、葛巻氏なのです。
トヨタの新社長佐藤氏は、30代はじめにこの葛巻氏と何らかの接点があった、ということなのかもしれません。
もしそうなら、面白いめぐりあわせですね。